ウクライナ企業との提携は、その高い技術力と機動力から大きな可能性を秘めていますが、法務面での「守り」も同様に重要です。特に戦時下においては、平時とは異なる法解釈や手続きが必要になるケースがあります。
1. 契約主体の正確な特定
ウクライナでは、多くの優秀なエンジニアが「FL-P(個人事業主)」として登録しています。契約を交わす実体が会社組織なのか、個人なのかを明確に特定し、支払い先と契約主体が一致しているかを必ず確認してください。これを怠ると、将来的な法的紛争の際に、責任の所在が曖昧になるリスクがあります。
Field Intelligence: 現地の登記簿(EDRPOU)は現在もオンラインで閲覧可能です。契約前に必ず現在の法人ステータスと、代表権を持つ人物を確認する「簡易DD」を徹底してください。
2. 知的財産権(IP)の帰属明確化
特にソフトウェア開発において、成果物のIPが「どのタイミングで」移転するかを明記する必要があります。「支払い完了時に自動的に移転する」という条項を入れ、さらにウクライナ法と日本(または第三国)法の差異を埋めるための補完的な合意書を準備することが推奨されます。
3. 紛争解決と準拠法
万が一の際、ウクライナの裁判所で争うことは日本企業にとって非常にハードルが高いのが現実です。したがって、準拠法をイギリス法等にし、紛争解決地をストックホルム仲裁裁判所などの「中立的な国際仲裁」に指定するのが、現在のグローバルビジネスにおけるスタンダードです。
