日本企業がウクライナ市場で成功を収めた最も顕著な例の一つが、楽天グループが展開するメッセージングアプリ「Viber(バイバー)」です。ウクライナのスマートフォンの90%以上にインストールされており、単なる通信アプリを超えて「国家のデジタルインフラ」の一部として機能しています。
1. 開発拠点としてのキーウ:徹底した現地化
Viberが成功した最大の理由は、開発の大きな拠点をウクライナ(キーウやオデーサ)に置き、現地の優秀なエンジニアに開発を任せたことです。ウクライナ市場向けの機能(ローカルビジネス向けのアカウント機能や、現地の決済システムとの統合など)は、現地の文化とニーズを最も理解しているウクライナ人チームが主導しました。「外資系サービス」ではなく、「自分たちの国のサービス」としての認知を獲得したことが決定打となりました。
2. 行政・国家インフラとのシームレスな連携
戦時下において、Viberの存在意義はさらに高まりました。ウクライナ政府の公式チャンネルが次々とViber上に開設され、空襲警報の通知、行政からの重要なお知らせ、さらにはデジタル身分証アプリ「Diia」に関する情報提供など、命に関わる情報インフラとしての役割を担いました。有事において「逃げずにインフラを維持し続けた」実績は、ウクライナ国民からの絶大な信頼(ブランドロイヤルティ)に直結しています。
3. 日本企業への示唆:コミットメントの重要性
楽天Viberの事例が示すのは、「商品を売る」のではなく「社会課題の解決にコミットする」姿勢が、ウクライナ市場で圧倒的なシェアを獲得する最短ルートであるということです。日本企業がこれから進出する場合、単なる製品輸出ではなく、現地企業とのジョイントベンチャーやR&D拠点の設立を通じて、「共に創る」姿勢を示すことが求められます。
